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秋の夜長にこの1冊。

リプラン古株Tです。
すっかり秋めいてきました。普段自分では絶対選ばない種類の本を勧められ
て、気乗りがしないまま読んでみました。
 
免疫学者の多田富雄氏と遺伝学者の柳澤桂子さんの往復書簡。いのちへの対
話「露の身ながら」。多田氏は突然の脳梗塞で声を失い右半身不随。柳澤さ
んは原因不明の難病で体が不自由になり激痛に見舞われ、体のいたるところ
が次々と病に冒される。ともに壮絶な闘病生活のなかで、現在の自分を受け
入れ、麻痺があっても知性が元通り残っていることを喜び「生かされている
その意味」にしっかり向き合っています。
 
途中病気の悪化などで、それぞれ1〜2か月くらいかかって書き上げてのや
りとり。二人とも超一流の科学者で実績もあげていた方達で、専門の研究に
からむ話題もでてきますが、平易でわかりやすく、こちらの知的好奇心を刺
激してくれます。
 
季節の花々の話題から、介護されることの多い身ならばこその伴侶に対して
の思い。便利な介護用品や車椅子の情報交換、リハビリ、日常生活から、オ
ペラや能など芸術、平和、遺伝子と明晰な知性でのやり取りは広範にわたっ
ています。お互いに相手の壮絶な闘病生活を思いやり、温かくエールを送り
あう優しさがこちらに沁みてきます。
 
予想に反してたいへん読みやすく、読後がたいへん爽やかで勇気と元気をも
らえた珠玉の1冊でした。

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