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使いやすさを徹底的に追求
家事を楽しくする自分サイズの家
■札幌市・Hさん宅
■設計/陽建築工房 今田浩昭 札幌事務所 TEL:011-773-6694 帯広設計室 TEL:0155-35-8995 |
寸法や使い勝手の細部までトコトンこだわったおかげで
機能的で心地よい家事空間ができました。 1年ほど前に完成したHさんの家は、都心に隣接した住宅街にもかかわらず、背後にはうっそうとした森が広がる自然豊かな場所に建っています。 家族の暮らしのメインステージとなる2階のLDKは仕切りを設けず、オープンな造り。陽当たりがよく、居心地のよい南側にはダイニングとキッチンを配置。そして、木立ちに遮られているため、人目を気にせずくつろげる北側にはリビングやバスルーム、テラスなどを設けました。ウッドデッキのテラスには、ガラス越しに森の四季を楽しめるコンサバトリー(温室)もあります。 また、採光と開放感を得るため、サニタリールームの北側の壁は上部が取り除かれています。壁の向こうは、吹き抜けの階段室。大きなガラス窓が設けられており、森の美しい風景を見ながら、朝のグルーミングが行えるセッティングです。 「子どもが通う小学校からバス一本で帰れる場所で、木や自然が多いところに住みたかったんです。それに、前の住まいは採光が悪かったので、新築するなら絶対に陽当たりのよさは譲れない条件でした。2階をオープンな造りにした一番の理由は、そこにあります。余計な仕切りがないので、子どもに声が届きやすく、家事の効率も上がります」。 実は、奥さんは自宅にオフィスを構える、ワーキングウーマンでもあります。限られた時間で家事をスムーズに行うため、キッチンの随所にもさまざまなアイデアが生かされていました。 例えば、システムキッチンの高さ。背丈が172センチと長身の奥さんには、既製品で最も高い85センチの仕様でも、まだ寸法が足りません。そこで、さらに5センチ上げ底にして、設置。「気持ちよく家事をしたい」との希望から、目線の高さに合わせて、システムキッチンの上部には開口部もたっぷり取りました。ジャストサイズに整えられた南向きのキッチンは、いつでも明るく、調理や後片づけも快適に行えます。 加えてキッチンの収納棚も、ジャストサイズにこだわった造作家具。 あらかじめ引出しの中にしまうものを決め、それぞれのサイズを測って、ぴったり納まるように造作してもらったとか。引出しのどこを開けても、グラスやぐい飲み、タオルなどが、目にも美しく収納されています。適材適所の収納も、家事を手際よく行うためのアイデアのひとつです。 「家族の健康のため、わが家では玄米食を基本にしています。手間や時間はかかるけれど、使いやすいキッチンができたおかげで、食事の準備も苦にならないんですよ」と、奥さんは楽しげに話してくれました。 |
■コレ! と思ったら妥協は禁物
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作業台上部の壁には、奥さんが「どうしても欲しかった」という、キッチンペーパーのホルダーが取り付けられています。また、クッキングヒーターは子どもの安全性を考えてラジエントヒーターを採用。
換気扇は、排気が直接外に出る下付けタイプのもので、雑誌で見つけ、自らメーカーに問い合わせて入手した、こだわりの設備のひとつです。「換気扇は予想以上に吸い込みがよく、掃除も簡単。ヒーターもガスに比べると安心ですし、後片づけが楽なので助かっています」。 |
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■本当に好きなもの必要なものだけを吟味することが
手間なし家事の秘訣
Hさんのキッチンには、徹底して機能性を追求する一方、ガラスやホウロウ、陶器などでつくられたキッチン雑貨が美しくディスプレイされた「見せる収納」も随所に見られます。モノが出ていると、場所柄、汚れやすいのが悩みの種ですが、「使うものしか置かなければ汚れはたまりません。ホコリが積もるものは、すなわち『不要物』なんです。要らないものは、原則として買わない。途中で使わなくなったものは捨てるか、人に譲ること。それが、手間なし家事の秘訣です」。 いつかは役に立つ、使えるはず…、そんな思い込みを潔く捨てることも、快適かつ、お洒落な家事ライフを実現する秘訣のようです。 |
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■使うものしか持たないから、モノの居場所もきっちり計画
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何がどれくらいあるかも大体把握しているので、大きさや量に合ったムダのない造作収納ができました。中段には引出しをつくり、グラスや酒器、タオルなどをアイテム別に収納。上部のオープンスペースには、調味料やカトラリー、箸などを美しく飾りながら収め、一番下のほうには、玄米など重量のあるものをホウロウのジャーに入れて収納しています。
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■本来の用途にこだわらず使い勝手でモノを選ぶ
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必要なときにさっと取り出せるよう、フライパンはしまい込まずに、フック式の金具にぶら下げています。また、通販カタログで見つけた3連式のランドリーボックスを、分別用のゴミ箱として活用。「自分らしく快適に家事をするためには、多少不便でも、気に入ったものが見つかるまでは買いません」。 |
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■自分の心地よさは、自分で手をかけて
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南窓から、明るい陽射しがたっぷりと入るダイニング。フローリングは、ドイツの無公害塗料「オスモカラー」を使って、奥さんが自ら塗装しました。このほか、本棚や洗面台、収納棚なども、好きな色に自分で塗装したとか。手間を惜しまないことも、家事を快適に演出するための秘策のひとつかもしれません。 |
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キッチンに近く、台所仕事をしながら洗濯物も一気に片づく洗濯コーナーと、北側の森を望むサニタリースペース。
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前回ご紹介の家はこちらです |
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