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リフォーム事例:暮らし上手さん
暮らし上手  
昭和2年当時の外観。周囲の様子も今とはかなり違います。外壁腰部分は横羽目板張り、上部は白漆喰仕上げ。(残念ながら復原では漆喰はあきらめることに)
<写真は田上家蔵。「旧小熊邸」倶楽部・代表 東野秀美様より接写したものを提供していただきました。>
旧小熊邸


正面外観。水平性が強調されたデザイン。

■札幌市中央区伏見5丁目
 ろいず珈琲館
■設計/田上義也
■施工/篠原要次郎
■移築復元設計施工/
 三井ホーム(株)札幌支店
 TEL011(222)4131
■建築データ
構造規模/木造2階建
延床面積/145.2m2
建築年/昭和2(1927)年
移築復原/平成10(1998)年5月〜9月

■移築復原に関するデータ
 (「旧小熊邸」パンフレットより抜粋)
協力/「旧小熊邸」倶楽部、照明器具復原/札幌市立高等専門学校 石崎友紀、絵ガラス復原/すずきまみ・(株)クリエーション工房林、窓の化粧板復原/トゥレベルク工房 国本貴文、監修/北海道大学大学院工学部建築史意匠学助教授 角幸博

 この建物は古くから札幌に残る歴史的建造物で「さっぽろ・ふるさと文化百選」にも選定されている「旧小熊邸」です。老朽化のため解体消失が危惧されていましたが保存運動により、平成10年秋、藻岩山ロープウェイ乗り場近くに建築当初の姿で復原移築され、喫茶店「ろいず珈琲館」として甦りました。


もと応接間の様子。グラフィカルな押し縁や長押は再現されています。天井から吊した照明器具は復原したもの。当時の写真(2枚しか残っていない)を手がかりに模型をいくつも作成して検討を重ね、原型に近づけていったそうです。

 この建物は昭和2年、札幌市中央区南1条西20丁目(当時は円山村だった)に、北海道帝国大学農学部小熊桿(元北海道大学理学部学部長)博士の自宅として、建築家・田上義也氏(故人)の設計により建てられました。昭和26年からは(株)北海道銀行が所有し、社宅、道銀円山クラブなどとして使用され、平成9年に移築保存が決まりました。

 この住宅は、設計者である田上義也氏の初期の頃の作品で、氏はアメリカ建築界の巨匠、建築家フランク・ロイド・ライト(日本での代表作品に「東京帝国ホテル」がある)に師事しその影響を受け、平面構成や深く張り出した軒先、サッシの幾何学的な割付など印象的な作風で、北海道の近代建築の草創期を代表する建築家です。

 構造には、ツーバイフォー工法の基本となったバルーンフレーム構造を一部に採用(復原では全面的にツーバイフォー工法が使用された)。外観では、田上氏の作品に共通する屋根の破風妻面を途中で切ったような破れ破風、外壁の腰部分は横羽目板張りとし、低く抑えられた階高、張り出した軒先、軒先に上端を揃えた窓など、水平性を強調。また、応接間として使われた部屋の亀甲型の大窓は印象的です。内部では、長押や斜めに走る押し縁、幾何学的な照明器具、造り付けの長椅子や菱形小窓、各所にくみこまれた窓飾りなど、インテリアもとても印象的です。


2階の見返し。上部には菱形小窓。


サンルームより見る。小割された窓サッシの所々に幾何学模様の窓飾りが配されています。これも復原したもの。


もと応接間の亀甲型の大窓。上部のガラスの植物模様は、小熊氏の好みだったと思われています。田上氏の作品には決してみられない意匠です。この模様も、当時の写真(モノクロ)を参考に植物の種類を選定し、カラーをつけて復原したもの。


もと寝室。窓面に向かって設置されたカウンターから、夜は札幌の夜景がチラリと伺える。
 復原は、保存を呼びかけた市民により結成された「旧小熊邸」倶楽部を中心として署名運動等が行われ、田上義也氏の研究者として第一人者である北海道大学の角幸博助教授の監修で進められました。建築から70余年あまりの間に幾度に渡って増改築工事が行われ、昭和2年当時とは様相も変わっていたため、当時の写真や現存する田上氏のスケッチ及び他の作品などを手がかりに図面を起こし、様々な分野の方々の協力を得て復原に至ったそうです。このようなすばらしい作品が市民の手により保存され、解放された施設として利用できることは、とても喜ばしいことです。ぜひ、全国のみなさんも一度足を運んでいただきたいと思います。

田上義也 プロフィール

1899年 栃木県生まれ
1913年 青山学院中等科入学
1915年 早稲田工手学校(夜間)入学
1916年 早稲田工手学校卒業
1918年 帝国ホテル現場事務所勤務。 アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの数少ない日本人弟子のひとりとなる。
1923年 北海道へ渡る。
以来、建築のプロフェッションを強く意識し設計活動を行った、北海道近代史上におけるフリーアーキテクト(自営建築家)の先駆者の一人。

2階の様子。もとはアトリエだった。天井面の細い材を浮かした装飾、四角錐の壁灯も復原。


もとサンルームの様子。2人用の席にはカップルの姿が・・・。



玄関ホールより階段を見る。移築前の階段をそのまま使用。 天井の照明器具はかろうじて一つだけ現存したものを参考に復原。当時はブリキ製だった。耐久性や今後の保存管理などを考えて現在は銅製。
 


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