↑東側の外観。東面には窓が少ない。アールの屋根と軒の深さが印象深い |
真駒内川に沿って建てられた家
■札幌市南区・Kさん宅 |
どの部屋からも、真駒内川が見え、春の新緑、夏の深い森、秋の紅葉、冬の雪時雨が楽しめるようにした。風呂場も、湯ぶねからも楽しめるように、湯舟のすぐ上からガラス窓とした。ほとんどの窓が、西を向いてしまったので、深めの廂をつけた。東を向いていた玄関にも景色を持ち込もうと、風除け室から長い土間を造って、玄関に入ると正面に雑木林が目の前に見えるようにした。この家から見える景色は、「ご馳走」である。このとっておきのご馳走を盛りつける器も、負けないものにしたいと器造りの巧いとっておきの人たちを紹介した。この時は、私がくどくどとねばることもなく、他の現場での仕事ぶりに感嘆して、住まい手が惚れ込んでこの人たちを選んだ。 |
↑1階和室前の縁側。森と川に向かって大きな開口がとられ、まるで外とつつ抜けになっているかのようにさえ感じる |
北海道という厳しい自然に対決する住まいもあるが、ここでは、自然になじみ、風景にとけ込む優しい表情の住まいとした。これも、住まいの中に寒さを持ち込まない技術があるから可能になったものであり、その技術に対する強い自信があってこそ造られた住まいである。 文/圓山彬雄 |
↑2階茶の間の様子。窓は前方の景色を楽しめるよう崖地の森側に向かって開いている。 |
↑土間から見える景色は室内の暖かさとは対象的な真っ白な冬の景観 |
↑玄関から土間空間を見通す。土間の正面奥には雑木林が広がる。玄関と土間の間にはガラスの引き込み戸があり、寒さを防いでいる ↑土間から玄関方向を見返す。2階への階段が見え、空間はさらに広がる。 |
↓↑2階居間。塗り壁と木の柔らかな仕上。奥は小上がり。西陽除けと断熱するための障子が引き込み式になっている |
|
↑2階居間。西側に窓。大黒柱が見える |
|
■建築データ 構造規模/木造・地下1階、地上2階建て、延床面積/273.55m2(約82坪)、 <外部仕上げ> 屋根/長尺カラー鉄板、外壁/防火サイディング、ジョリパット仕上、建具/木製サッシ(木工センター)Low-Eペアガラス、 <特徴的な内部仕上げ> 床/ナラフローリング、チークオイル仕上、壁/ラスボート下地ジュラク下塗り材コテ仕上、天井/米松小巾板貼CL仕上、 <断熱仕様> 基礎/スタイロフォーム50mm、床下/グラスウール(24kg/k)200mm、壁/グラスウール(24kg/k)100mm、屋根/グラスウール(24kg/k)300mm ■工事期間/平成11年6月〜12月(約7か月) |
圓山 彬雄 プロフィール 1942年 新潟県生まれ 1967年 北海道大学大学院修士課程修了 1971年 上野建築事務所入所 1979年 URB(アーブ)建築研究所開設 現在、北海道工業大学非常勤講師 日本建築学会北海道支部 計画委員会委員 北海道景観アドバイザー <主な受賞> 1987年 北海道建築賞 1988年 日本図書館協会建築特定賞 札幌市都市景観賞 1991年 第1回ベルカ賞 1994年 日本建築家協会北海道支部 住宅部会住宅賞「ハルニレ賞」 1996年 北海道赤レンガ賞 |
前回でご紹介の家はこちらです |