建築家小室雅伸氏の震災レポート_03

建物被害について概観

1 木造建築(在来木造、土蔵造りなど)では、古いものは土台そのもの・土台近くの構造材が湿気による腐朽と白アリにより、地震以前に耐力が無い状態であったものが揺れによって破壊された。基礎は大谷石等で造られたものであるが損傷は受けて無い。基本的に当初の耐力が既に老朽化で失われていたことが直接原因であるから、もし土台の腐朽などが無かったらどうであったか・・・ 明らかなことは、木造は基礎・土台周りに耐久性の全てがかかっていることを示した。白あり対策と内部結露対策にかかっている。
右下の鐘楼は屋根瓦もしっかり、損傷は見られない。他にもあったが無傷。

2 瓦屋根はその工法上の弱点がいつものように露呈した。二階の棟瓦の破損→それが1階の屋根瓦を損傷 の図式が圧倒的。 新しい桟瓦工法でしっかり施工されたと思われるものは無傷。それは、下部構造の耐震工法がしっかりしていることにより揺れなどが軽減されたこととの複合結果であることは明らか。瓦屋根の熱環境性能は極めて優れているし、地域性・歴史性を示す外観の価値も貴重。安易な排斥はすべきではない(・・・下記、6の吊天井に対する考察と矛盾するけれど・・・)

3 明らかに新しい木造建物は外観上無傷が圧倒的。木造の耐震化は明白に利いている。新築の殆どはベタ基礎工法であり、基礎と土台・柱の緊結がしっかりしているため地滑り崩壊でも基礎ごとそっくり移動し傾いているがそのまま吊り上げて元に戻せそうなくらい頑丈。右下は岩間地区で津波に流されたベタ基礎。上部構造は引きちぎられ土台と床板の一部は付いている。

4 これは酷い、という損壊を受けている建物は耐震基準以前の構造及び古い木造で構造材が腐朽しているもの、そしてかなりいい加減な施工、液状化などの地盤変形が重なったものに限られる。

5 RC造のせん断破壊等の致命的被害を受けているのは旧耐震のものに限られるであろう。新しい建物はに外見上の被害は見られず、通常営業されていた。左下は須賀川市役所の端部で3階の耐震壁に損傷。

6 新しい建物でもスーパーや葬儀場で、外観は数か所ガラスが割れる程度であっても、吊天井の落下による被害が相当に多い。茨城空港同様、以前から指摘されてる吊天井の問題は基準法の根本的な見直しをすべき、と思う。地震発生時の国会議事堂での、シャンデリアの落下に議員全員が全注意を払っていたこと、九段会館の事故と合わせて見直すべきと思う。取り付けられたもの、吊られたものは落ちる可能性を持つ。ならば、取り付けたり吊り下げる物を無くすことが検討されるべき。取付方法の強化策は「想定外」には無力である。

7 建築物として構造的な損傷を免れても、室外機等の外部付属設備の破損により使えない事例として、コロンブス工法で建てられた「グループホーム つどい」のケース。

●外観に損傷は見えないが、数か所のサッシにゆがみでロックできず、ガムテープ等で補強しているとのこと。
●屋上設置のエアコン室外機が故障(機器本体の倒壊か接続配管の破断などかは不明)、通電されても暖房できないので寒くて居られない。
●断水、停電により入居者はすぐに他の施設に移して施設は閉鎖している。

8 太陽光発電パネルの設置事例は少ないが、しっかり屋根面に残っていたのはすこし意外であった。 パワコンが損傷を受けていなければ最大1.5kwを予備コンセントから使えるとのことだが、停電時に有効だった事例の調査報告を知りたい。

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