建築家小室雅伸氏の震災レポート_02

2 いわき市  
須賀川市の南東約30kmに位置する港町。震度は6弱で建物の直接被害は須賀川よりはるかに少ないが、扇状地の地質・埋め立て地が多く、支持深度40mと地耐力が小さい。今回の地震以前からの経年的な地盤沈下に加え、今回の地震による液状化等で地盤沈下が大きく進み建物の傾斜、地盤との高低差の発生、室外機類・及び給排水等の配管接続の破断などの被害が大きい。

大規模湾岸工業地帯 石油コンビナート・小名浜製錬所・日本化成小名浜工場等が連なる小名浜港に面する大規模湾岸工業地帯や小名浜漁港は復旧作業の進行が早く、広い港湾道路は津波の痕跡も僅かなのは、計画的な工場地域計画ゆえに道路・空き地が大きいので大型重機による作業を容易に行えたからである。 


 打ち揚げられたパージ船の50m以上ありそうな鋼管積荷を移動していた 小名浜工業港沿いの湾岸道路にて撮影

一方、小規模工場・商店・民家が並ぶ小名浜の市街地は津波の高さはさほどでもなかったようで床上浸水等によるスクラップ類が道路際にまとめられ回収待ちのレベルになっている。街機能は正常化してる。

 茨城との県境にちかい植田町、佐糖町の勿来火発近辺、岩間町、小浜町など沿岸部は言うまでも無く津波による全壊被害である。
 
勿来火力発電所  停止もなく無被害だが、防波堤は決壊し近くの墓地は当然全倒壊、3m程度の津波かと思われる。ここに連なる岩間町は防波堤が決壊し津波にのまれた。


岩間地区  http://www.youtube.com/watch?v=-2bspSgtE9k  堤防が根こそぎ流されて道路の向こう側に。壊滅状態。若い奥さんの軽自動車の移動にJAFがちょうど到着した。殆どの車は整理されている。郵便配達のバイクがガレキの中を走って行ったが、すぐに折り返してきた。

小浜地区  

岩間地区から一山隔てた小さな漁港と美しい海水浴場がある集落。防波堤の一部が決壊、防波堤を超えた津波は瓦葺の古い住宅を破壊した。僅かな新築木造住宅は全壊は免れ、CB造の車庫と新築したばかりのRC住宅はしっかりと建っている。このRC住宅のかたずけをしていた夫妻に、通りすがりの知人が声かけた。「布団干してどこ持ってくのーー?」 「避難場所にだーー」「この年になって、またこれから住宅直すのもなー 皆んないなくなってここだけぽつんと残っても住む気にはなんねーな」

海水浴客用RC造トイレは防波堤の海側に建つが無傷。

コロンブス工法の建物 
須賀川市郊外のPLG社屋は木造2階建て。ログ風の建物。内部の資料、パソコンが倒れた程度で建物の被害は皆無。建物と地盤との境にミリほどの隙間もなし。フローティングゆえに地盤と共にゆられるから、杭基礎で頑張る建物とは全く異なる。
 井戸を掘ってたこと、暖房は薪ストーブ1台のため、ライフラインの切断には影響されてない。ガソリン不足が最大の問題だった。

 いわき市のダイソーにおいても同様に地盤と共にゆられるから、正面右端の地盤が5センチ程度下がって、水道管が断裂した程度で入口、側面の建物と地盤の取り合い部分は何事も無い。
 隣接の建材店(下右写真)は、杭基礎の為周辺地盤が約20㎝下がり、各種配管は断裂、ポーチ階段の段差大。道路沿いの大看板基礎廻りは30㎝程度地盤が下がり、アスファルト舗装で段差解消の手当てがされていた。 いわき市の殆どの建物は杭基礎なので、激しい地盤沈下による段差拡大が大きな残留被害となっている。その点において、コロンブスの特性との差が大きい。

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