取材・文／大成 彩　写真提供／（株）スペースシャワーネットワーク（撮影／川島 小鳥）

ミュージシャンとしてだけでなく、イラストやエッセイなど、多方面での活動で注目を集めているかせきさいだぁさん。どんな「家」に住みたいと妄想しているのでしょうか…？

今回の「住みたい家」はすんなり思い浮かびましたか？

実は家にあまり興味がなくて、「住みたい家って言われてもなぁ…」ってちょっと悩みましたね。でもこういう感じというか、暮らしかただったら興味が持てるな、と思って描きました。

この絵はどうやって描かれているんですか？

最初にらくがきを描きながら考えて、何回か下描きしてよくなったものをライトボックスの上でトレースして本気のやつを描いて、それをスキャンしてパソコンで彩色するんです。ハグトン*の4コマ漫画と同じ描き方で。

見たところ「釣り」を主目的とした家という感じがしますが…？

そうですね、もう、なんも考えてないじゃんって感じなんですけど。倉庫みたいなところを改装して、釣りだったりスケボーだったり遊び道具が置いてあって、家の中なんだけどテントで寝泊まりするっていう。買い出しは原付で近所のスーパーとかコンビニに行くっていう暮らし方ですね。

じゃあ、「キッチン」とか「お風呂」とか必要な要素や機能を備えていくというよりは、好きなものに囲まれてシンプルに暮らしたいということですかね。

まあ、お風呂とか食べるところとかは別にあるか、外に行くかってことだと思いますね。夏は暑かったら外にテントを出して寝るかな。そうなるともう「家」ではないんですけど…（笑）。

立地としては、湖ですよね。

湖がいいですねぇ。川が近くに流れ込んでいて、家から直接湖に出られるというのが理想ですね。どうしてこれを思いついたかというと、カヌーイストの野田知佑さんが、亀山湖の管理事務所かなにかの建物を借りて住んでいたって話を読んだことがあって、そのイメージなのかもしれないですね。ほんとうにこんな感じで建物の中にテントを張って暮らしていて、雑誌に書いた原稿料のお札を壁に直接ピンで留めて、買い物に行くときはそれをビッと剥がしてカヌーに乗って行く。なんというか、そこには僕の思っていたものとは違う「ワイルド」があるなと思って。

スタイルとしての「アウトドア」や「ナチュラル志向」ではなくて、好きなところに自然に住み着いてしまったという感じですよね。

そうですね。一時期、テントやなんかを一式揃えて、バイクに積んでバーッと行ってどこかで寝泊まりしようって思ったことがあるんですけど、ちょっと良さそうなところを道から下りて行くとだいたいキャンプ場なんですよね。キャンプ場以外ではなかなかテントを張れそうな場所ってないし、かといって整備されたその場でっていうのも違う気がしてあきらめちゃったんです。日本ではそういうことができる場所はないのかなって思って。

でも、野田さんみたいに川や湖が好きで、たまたまそういう場所があったという、そんなアウトドアとかワイルドだったら僕にもできるなと思って。野田さんはカヌーで買い物に行くし、湖に潜ってブラックバスを捕まえて食べるっていう感じだったから、そこまではできないと思いますけど。僕だったら買い物はバイクで近所のスーパーとかに行っちゃいますから。

わりと自然の豊かな場所に住みたいという志向はあるのでしょうか？

ツアーなどで行くいろんな土地に釣り竿を持っていって、川がある場所なんかを探してうろうろすると、「ここは釣れるからいいなあ」とか「自然が気もちいいなあ」とか思うんですけど、東京に戻ってきてみると、家のすぐ近くに多摩川があるんですよね。なんとなく「都会に住んでいる」っていう思い込みがあったんですけど、川も緑もけっこうあるし、畑なんかもあったりして、東京でも「田舎暮らし」ができるなっていうことに気がついて。それに気がついてからは、そういう方向にまっしぐらですね。釣りも街なかでするっていう「City Fishing」っていう新しい概念を思いついて、それをやっていこうかなと思ってるんです。

アウトドアにしても釣りにしても今あるものを極めるということではなくて、自分なりの新しいやりかたみたいなものを見つけていきたいっていうことでしょうか。

そういうのが好きなんです。もっとシンプルにと言うか。高い道具を使って、遠くまで行って、ということではなくて。僕の釣り竿は小さく折りたためる安いやつなので、多摩川で釣りして、そのあと高島屋に行って買い物して、そのまま飲みに行くみたいな楽しみ方ができるんです。「釣り」と言ってもみんながみんな極める必要はなくて、ただ「楽しい」というところにいたいんです。誰よりも楽しんでいたい（笑）。

*ロックンロール・ニュースで連載中の4コマ漫画。http://www.lilyfranky.com/top/haguton/