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リフォーム事例:暮らし上手さん


  基礎から自前の、セルフビルド
人生を
何倍も堪能しています


■札幌市北区・佐藤孝司さん


外観。外壁タイルも自分で施工。これから足場を再び組んで塗装する予定。

基礎づくりから自分で手掛け、今も家づくりを進めている佐藤孝司さん。
支えてくれたのは、建材や建築のプロたち。
多くの人との出会いは、佐藤さんにとって
セルフビルドの家とともに大きな宝物になりました。
文/宮野恭子写真/戸田 肇
Text/Kyoko MiyanoPhoto/Hajime Toda



珪藻土をバケツに入れ、「マゼラー(レンタル)」という機械で一気に混ぜる。十分混ぜたら準備完了。本日は、テラニシの寺西社長(中)も手伝つての作業。最初はおっかなびっくりでも、回数を重ねていくうちに慣れていく。あまり神経質にならずどんどん塗っていくことが大事。


 「何で、日本の住宅は海外に比べて高いんだろう」という疑問から、「だったら自分でできるところは、自分でやったらコストダウンにつながるはず」と考えた佐藤さん。
およそ2年前に「自分の家は自分の手でつくろう」と決心し、まずは材木を扱う会社に電話をしてみました。しかし、何のコネクションもなく、素人が「家を自分で建てるので木材を買いたい」と言ってもなかなか相手にしてもらえません。とある会社に西洋在来工法・ティンバーフレームの家を自分で建てるつもりだと話したら、「それなら、テラニシという会社がある」と情報を得ることができました。
 ゼロからのネットワークづくり。「やるしかない」と決めた以上、初めて会う人にも自分の熱意を伝えるしかありません。そんな姿にテラニシの社長の心が動きました。そして、あえて全面的に手を貸すことはせず、本当に困ったことがあればサポートするという、一歩引いた立場で佐藤さんの家づくりを見守ることに。2×4パネルを組み立てる、道具を調達する、書類の申請など、どうしても素人では限界のあるところをテラニシが行うことで、佐藤さんの夢は実現性をおびてきました。

2階LD。アーチを描いた優美なデザインはティンバーフレームの特徴の一つ。もともとは船大工が手掛け、発祥地のイギリスからアメリカやカナダに渡った工法。


 スタートは昨年の春。まず、基礎づくりから始まります。もちろん作業は自分で。東北で魚を入れる箱を作っている会社から発泡スチロールの型枠を取り寄せ、エッチラオッチラ2ヵ月。平日は仕事があるので、家づくりに関われるのは基本的に土日のみ。時間がかかるのは最初から覚悟の上です。
 慣れない土方作業をひとりでやっていたある日、近くの大学生が「大変ですね」とスコップを持って手伝いにきました。が、よっぽどキツかったのか、その後パッタリと姿を見せなくなったそうです。土壌蓄熱式の床暖房サーマ・スラブは、責任施工ということで取り扱い会社が工事を行いました。また、建物のフレーミングでは大工さんの協力を得ています。棟上げは4人で行い、佐藤さんも地下足袋をはいて梁の上を右へ左へ。フレームが出来たら、壁を貼って、サッシをはめ込んで。
 「やればできるじゃないか」と順調にいっていた矢先、事件が発生しました。天窓からものの見事にズトンと落ちてしまったのです。幸い床を貼った直後で骨折などのケガはありませんでしたが、身体を思い切り打ち付けてしまい、どこもかしこも痛くて手を動かすのもやっとの状態。ぎこちない動きは、それから約1週間続いたそうです。佐藤さんは「ウマクいってたので調子にのっていたのかもしれませんね。おかげで気が引き締まりました」と、この事件もプラスに考えています。
 空間を間仕切り、床や天井を貼り…。あせらず、自分がやりたい時に楽しみながら進める家づくり。ペースは遅いものの、確実にどんどん家らしくなっていきました。現場での姿もすっかり板につき、ある時など「親方、仕事があったら何かまわしてよ」と通りがかりの左官屋さんに声をかけられたほど。それがきっかけで、佐藤さんはその左官屋さんからタイルの貼り方を教わり、1階の床を仕上げました。さまざまな出会いも家づくりの楽しいエッセンス。そして「何よりの財産」と佐藤さんは言います。

2階の壁に珪藻土を塗るためにマゼラーで混ぜているところ。佐藤さんはすっかり板に付いている。

1階の玄関ホール。通りがかりの左官屋さんに習ってテラコッタタイルの床を貼った。家づくりは、意外な展開も数多くあり、予想以上の面白さがあったそう。猫も興味津々について回る。

天井のパイン材も1枚1枚、自分で張ってみて「大工さんの苦労がわかった」と佐藤さん。玄関ホールからつながった空間は多目的なフリースペース。


 「素人がつくる100年住宅」。これをコンセプトに、どの部分にも思いを込め、真剣につくりました。基礎工事に入ってから、ほぼ1年。完成にはまだ時間がかかりそうで、家族で暮らすのももう少し先のこと。
 けれども今回の家づくりを通じて、技術を習得し、経験を重ね、人脈を広げ、「人生を何倍も堪能した」と佐藤さん。第2、第3の佐藤さんがもっともっと増えてきそうです。 テラニシさんでも、そんな方々のために家づくり講習会を始めるそうです。

佐藤さん(右)と、強力な助っ人の寺西社長。 柱のお札の下には、家をつくり始めて間もなくお父さんから贈られ、結局それが形見となったノコギリが、工事の無事を見守るように掲げられていた。

南側外観。家のまわりに資材が置けることを条件に土地を選んだ。

この天窓から佐藤さんは落下。「家づくりを甘く見るな」と教訓になった。


吹き抜けに太い梁が走る。キッチンも自分で施工し、レンガも貼った。


まだ未完成のお風呂。泊まりがけで作業   をする時は使っていて、このバスタブの形が気に入っている。


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