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西野の浮かぶ家(HMOR)
■札幌市西区・ Mさん宅 |
玄関を入ってすぐのカンバセーションエリア。 |
玄関。 |
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アプローチを上部より見返す。→ |
▲1階ホールより見上げる階段スペース。暖かみのある黄色の壁が印象的。 |
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階段踊り場より見る。→ 1〜2階ともに南面に大きく開口がとられ、開放的。 |
この住宅は高低差のある宅地の一部を切り売りした土地に建っている。施主と時間をかけながら適地を探し求めての、果てに辿り着いた敷地である。なかなか癖のある場所だけに逆に興味が湧いた。南は全く建築が建ちそうもない学校のグランドが拡がり、北は高台だけにちょっと市街が遠望できる。ファサードは道路側に対して一見無愛想な閉じた表情をしているが、可愛い中庭が迎えてくれる。アプローチが直接的でないためか、外部空間に奥行きが生まれた。1階はプライベートな空間と小さなカンバセーションエリアで構成され、一部を除いてパブリックな領域のほとんどが2階へと集約された。これにより、南の開口部はグランドのレベルと程良い関係が保たれるように床まで落とし、元気な生徒達の動き回る様や四季の移ろいが自分の庭のように感受できる視野の拡がりを求めて、ほとんど開放されることになった。夏の緑もさることながら、冬の生徒の消えた校庭は広大な白銀の世界に変貌し、時折、長い尾のキタキツネも顔を出すという、さながら映画のワンシーンをこの窓から見る思いだ。さらに、敷地のこんな事情から建物は一部地上から浮いている。奇妙なアンビバレンツがこのBOXを印象づけることになった。前に存在した土地をいじらずに建てたこと、これが結果的に住み手にとって楽しく暮らせる家になったのではないだろうか。土地形、さらには以前の住人の残した門型に至るまで時間の痕跡が残っている。 時代は便利さとか新しさを求め続けるが、今一度ゆったりとした人間本来の時間を取り戻せるような空間や、人が「住む」ということの意味を、「住宅」というフィールドを通してこれからも考え続けていきたいと思っている。
文/松橋 常世
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居間からバルコニーを囲い込む用に挟んで向かいに食堂が見える。 |
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玄関アプローチより見る夕景。内庭に室内からほんのり明るい光が漏れる。 |
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食堂の様子。間仕切り壁はブルー系の色合い。 |
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■建築データ 構造規模/木造、一部RC造・2階建て、延床面積/126.81m2(約38坪)、 <外部仕上げ>屋根/ガルバリウム鋼板蟻掛葺、外壁/モルタル横梯目引仕上、 建具/玄関ドア:木製ドア、窓:木製サッシ、 <特徴的な内部仕上げ>床/ならフロア、壁・天井/PB9.5mm、AEP、 <断熱仕様>床下/現場発泡ウレタン45mm吹付、壁/高性能グラスウール16kg100mm、屋根/SF50mm+50mm ■工事期間/平成11年9月〜12月(約4ヵ月) ■工事費用/約2,400万円 |
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