ライフラインが断たれた時の実態調査報告_4

ライフラインが断たれた時の暖房と室温低下の実態調査報告

2011.6.25 
住宅技術評論家・南雄三

4.停電で使えなくなる設備機器
調査結果より以下のことがわかった・・
●系統電力を用いる暖房器
・ガスや石油をエネルギー源とする暖房器(FFストーブ、ファンヒーター、温水パネルヒーター、温水床暖房など)でも、電力を用いるものは停電すれば使えない。
●エコキュート
・停電すれば使えない。
・但し、手動で貯湯していた湯を使うことができる。
・停電がいつ終わるかわからないので節約の為、意識的に風呂は使えない。
・調査結果では460リットルの貯湯タンクのお湯は3~4日は使えるという。
●ガス給湯器 ※1
・電池式の瞬間湯沸かし器以外は停電すれば使えない。
●コジェネレーション
・燃料電池、ガスコジェネ共に、停電時は使用できない。
・太陽光とのダブル発電でも、自立運転の電源を使用するシステムがないので、使用できない。
・断水時も使用できない。
・地震時の安全ストップについては地震感知機能はなく、他のガス給湯器と同じく震度5でマイコンメーターがガスの供給を遮断する仕組み。
・貯湯タンクのお湯は、手動で取出すことが可能。
・産業用などでは停電時も使える機種がある。
●太陽熱温水器
・強制循環式のものは停電すれば使えない。
・自然循環式のものは停電時でも水がきていれば使える機種がある。
・タンクにたまっている湯は非常用水として抜き出しできる。
5.停電時に強い暖房
アンケートに書かれた内容から読み取る停電時に強い暖房器具の実態
●蓄熱する暖房器
・深夜電力蓄熱式ストーブ(通称チクダン)や蓄熱式床暖房:深夜電力で蓄熱した後で停電した場合、その夜は十分に暖められる。
・温水パネルヒーター:チクダンほどではないが、ほんのり熱を残している。
●地場のエネルギー
・薪ストーブ:主暖房として使っていない(もしくはほとんど飾りの状態になっていても)、いざという時には主暖房になれる。
●独立したエネルギー
・プロパンガスはボンベで各家に設置されていくので災害に強い。また、もし器具が破損して使えなくなっても地元の業者で俊敏に修理することができる。
●開放型ストーブ
・電池式なので停電しても使える。怖いのは転倒。換気に注意。
●携帯型燃焼器具
・カートリッジ式ガスコンロ:調理用として活用しながら暖がとれる。
●太陽光発電の活用
・停電しても日中日射があれば発電することが期待されるが、停電した場合には「自立運転」として100V最大1.5kWh分しか使うことができない。
・パワーコンディショナーに設置されている「自立運転」の100Vコンセント(1~2ヶ)から電力を得る。
・最大1.5kWhでどんなものに使えるか・・携帯電話の充電とかラジオを聞くとか、天気が良くて発電量が多ければテレビを見るとかの程度で、調査結果でもこれらに加えて炊飯、洗濯機も可能だった。
●ガス関連 ※1
 主に台所で使う小型湯沸器、浴室で使うBF式風呂釜、CF式風呂釜、 RF式風呂釜は、商用電源を使用しないので停電時にも使用できるが、台所の小型湯沸かし器などは換気扇が停電時には働かないので、換気に配慮しながら使う必要がある。
 ガス石油機器工業会によると、今回の震災と計画停電では、停電時に「凍結による機器内部の配管の破裂などの故障」があった。通常、ガス給湯機は凍結予防のため管をヒーターで温める仕組みになっているが、停電時にはそのヒーターが作動しなくなる。 地震発生から東北地方は冷え込んだため凍結が起こった。停電時には手動で水を抜く必要がある。取扱説明書をみたが水抜きは面倒な作業のようだ。
 
・・・以上のように停電しても強い暖房とは・・「蓄熱」「独立したエネルギー」「電気を使わない」ものが挙げられる。「蓄熱」できるものなら1日くらいの停電なら十分に暖房できる。また「独立したエネルギー」として薪、プロパン、カセット燃料、灯油がある。そして「電気を使わない」暖房器として電池で動く開放型ストーブや薪ストーブがある。
7.暖房なしで室温低下を防ぐ工夫
●日射熱利用
・カーテンをすべて開け、太陽熱で暖める。
●熱の逃げを防ぐ
・夕方、日が暮れる前にカーテンを閉め、極力熱を逃がさないようにする。
・玄関ドアの開閉を素早くする。
・給排気口を一部を除いて閉じる。
・使用する部屋を一つにして気積を少なくする。
・就寝はストーブのある部屋に集まる。
●厚着など
・厚着をする。
・夜は早く布団に入る。
・火のない炬燵にもぐりこむ。
●熱の活用
・カセットガスコンロで室内でお湯を沸かして、暖房にも利用する。
・湯を沸かせる場合に湯たんぽを抱える、ふとんに入れる。
8.その他
●エコキュート
 以下、調査過程にメールのやりとりで得た情報・・
「①地震での転倒(床・壁に転倒対策をしていたが倒れる・内部構造に問題があると思われる)
②浸水(床上浸水で故障・灯油・ガスシステムより弱い気がする)
③特別な部品のようなので修理が難しい
エコキュート・温水器の弱さは 自分の家に関しての感想ですが(我が家は完全に転倒してバラバラになりました)まず 縦型が弱いのかも知れません。あと、中の水タンク(お湯)を囲む構造があまりにも弱過ぎ?
内部タンクを支える鉄骨や側のカバーが地震の揺れでタンクの中の水が振れ、それを支える鉄のカバー?が もたなくなった??(想定外の揺れなのかもしれませんが?)」
●上記の報告に対して、他の業者より以下のような意見があった・・
・地震の揺れによる転倒(調査結果でも転倒があったと報告されている)に関して、メーカーによるとエコキュートのタンクの倒壊の原因は殆どが設置する上で、台座にアンカー止めをしていなかったり、タンク上部に振れ止めが付いているのですが、それが未施工だったりした場合とのこと。
・東洋ベースと中部電力が開発したエコキュート設置用基礎「エコベース」は、特に耐震強度を重視した設計になっている。http://www.toyobase.jp/chubu/eco_he.html
・ 地震の際に働く安全装置があるのかどうか不明。少なくとも家づくり業者は認識していない。
※災害時以外の問題点
・災害時ではないが、寒冷地では冬場、凍結が良く見受けられるという報告もある。
 但し、殆どは保温材を施工していなかったり、排水ドレンの不適切な処置や室外機の設置高が低かったりで原因はマニュアルどおりにやっていないのが大半のようだ。
●蓄熱暖房機
これは我が家だけかもしれませんが 壁に地震対策の動き止めを強力にしていたつも
りでしたが全て外れ 金物が折れ曲がり 数箇所約1m近く動き倒れました。
でも 8箇所ある蓄熱は今回の地震で1箇所だけ故障しただけでしたが(逆に強
い??)」

※1:情報提供:日本物流新聞・牛尾理香
●南雄三事務所 
南雄三
〒162-0063 東京都新宿区市ヶ谷薬王寺町74
☎03-3268-7943
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