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総務省統計局が行った調査によると、15歳未満の子どもの数は1725万人(平成20年4月1日)。一方、一般家庭で飼育されている犬や猫は2399万頭(平成20年 (社)ペットフード協会調査)と、子どもの数を上回っているとの結果がでています。今や、ペットは家族にとって「飼う」ものではなく「共に生きる」暮らしのパートナーとなっているのです。
そこで、今回は獣医師、愛犬家住宅コーディネーター、建築家、それぞれの立場からペットとよりよく暮らすための環境づくりについて、お話をうかがいました。


家族のライフスタイルに合ったパートナーを選ぶことが
人も動物も快適な暮らしへの近道です
なんぽろ動物病院 院長 魚住 大介さん

健やかな時も病める時も共に生きる覚悟はありますか?

 他の地域に比べ、北海道では戸建てが多く、新築を機にペットを飼い始める傾向があるようです。ひと口にペットといっても、近年はさまざまな品種改良が加えられ、外見も性格も多種多様。特に、犬はチワワのような小型犬から、ゴールデンレトリーバーのような大型犬まで多彩です。新生活のパートナーとしてペットを決める際には、そうした違いを事前に十分調べ、住宅環境、家庭環境にあった犬種を選ぶよう、お勧めしています。ペットショップなどで可愛い盛りの子猫や子犬を見て、衝動買いしてしまうと、後々のトラブルの種になることも少なくありません。
 犬は12~15歳、猫なら13~14歳が平均寿命と言われています。飼い主さんの現在の年齢からペットが天寿を全うするまで、責任を持って暮らしを共にできるのか、慎重に検討してください。また、健康管理の面だけでも、生まれてから1歳までの子犬・子猫の時期、育ち盛りの2歳以降、成犬・成猫期を迎える5歳、10歳を過ぎてさまざまな衰えが目立ち始める老齢期と、年齢に応じた対応が必要になります。昨今は、飼育環境の向上に伴って、犬の寿命が延びています。その反面、今までになかった病気にかかったり、認知障害や寝たきりになり、老齢期に介護が必要になることも日常的になりました。
 こうしたライフステージの変化によっても、ペットとの付き合い方は変わります。ペットがコンパニオンアニマルとして広く社会に認知されるに従って、将来への備え、安心料としてペット保険に加入される飼い主さんも増えています。

なんぽろ動物病院

犬と猫など、人と共に暮らす身近な動物を、家族、友達などと同様に位置づけコンパニオンアニマルと呼ぶ。伴侶動物(はんりょどうぶつ)とも表現される。


長く安心して一緒に住まうために覚えておきたいいくつかのこと

 ペットを室内で飼うことが当たり前になっている今、家づくりにもペットのライフステージの変化、特性にあわせた配慮が求められるようになってきました。
例えば、足腰を痛めやすいミニチュアダックスと暮らすなら、フローリングなどの滑りやすい床材はNG。また、最近人気のスケルトン式の階段は、活発な小型犬は踏み板の間から落下することがありますので、避けたほうが無難です。また、バリアフリーの室内環境を整えた住まいは、人間だけではなく、老年期を迎え足腰が弱った大型犬の介助にも役立ちます。
 室内飼いをしていれば、床や壁がツメや排泄物などで汚れることもあります。家具や壁にキズがつくことも日常茶飯事です。住まいは傷み、汚れるのが当然と心構えをして、ペットを家に迎え入れてほしいと思います。ただし、子犬、子猫の社会化期には電気コードなどをかじるなど、ちょっとしたいたずらが思いがけない事態を招くこともありますので、ご注意を。小さなペットを家に迎え入れたその日から、して良いこと、悪いことのルールづくりを行って、家族で根気強くしつけを行いましょう。
 しつけをしっかりしたのに、急に今までしなかった行動をとるようになった。そんな時には病気が関連していることもありますので、かかりつけの獣医さんに相談することをお勧めします。また、病気や怪我だけではなく、さまざまな共同生活の悩みを気軽に相談できるかかりつけ医を持つこともまた、ペットと長く暮らすために大切なポイントです。

取材協力/なんぽろ動物病院

取材協力/なんぽろ動物病院
南幌町栄町2丁目1-18 TEL 011-378-5828
飼育相談、しつけ相談、セカンドオピニオンにも対応可能


※本特集の掲載されているReplan北海道 vol.90はコチラからご購入いただけます。


犬がうれしいことを追求した住まいは、
住まう人にもやさしく、心地よいものです
勇和建設(株) 愛犬家住宅コーディネーター 池田 千夏子さん

2階天井まで吹き抜けた開放的なLDK。家の周りには、ドッグランを兼ねたデッキが張り巡らされ、リビングからも出入りすることができる。将来介護が必要になった時に備えて、排泄の介助がしやすいバリアフリー設計に


 犬は社会性がとても強く、集団で行動する動物です。人と暮らすときにも自分と家族をひとつの群れとして考えます。愛犬と暮らすための空間づくりのヒントも、ここにあります。
 犬がうれしいのは専用の部屋を与えられることではなく、家族と触れ合える共有空間と時間をたくさん持つことです。そのためには、意外かもしれませんが、まずは奥さんが家事を短時間で効率よく、楽しくできる家にすることです。家事効率が上がれば、愛犬と過ごすための時間にもゆとりができます。また、住まいをカフェのようにスタイリッシュに美しく整えることで、心にも潤いとゆとりが生まれます。結果、愛犬と接するときにも自然と笑顔になって、心からくつろぐことができるでしょう。そんな時間を共有することが、愛犬にとって一番うれしいことなのです。 人にも犬にもストレスフリーな空間は、互いのコミュニケーションを深め、しつけがしやすくなるという、効用もあります。
 私自身も、8年前にゴールデンレトリーバーを家族として迎え入れ、住まいを新築しました。実際に一緒に暮らして、あらためてさまざまな不便に気づきました。そこで昨年、愛犬家住宅コーディネーターの資格を札幌で初めて取得。今年5月に自宅をリフォームし、理想の住まいを実現しました。これからは、そうした経験を生かして、一軒でも多くのご家族と、愛犬と共に暮らす喜びを分かち合いたいと思っています。

  

※写真の説明※
左:リビングに配した収納は4方向から使え機能的。その中央には犬の落ち着く場所兼、一緒に遊ぶためのトンネルが設けられている。キッチン側には、吸湿性の高いタイルを張った食事・水のみコーナーが
中:化粧コーナーが玄関脇に。洗った犬の足を乾かすのにも便利なドライヤーから化粧品やゴミ箱まで、造作棚に収められている
右:タイル張りの玄関には、散歩から戻ってすぐに犬の足が洗える温水シャワーや、犬の飛び出しを防止するスクリーン式フェンスを完備

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個性と体力に合わせた小さな気遣いが
猫が喜ぶ居心地のよさを実現します
(有)TAO建築設計 一級建築士 川村 弥恵子さん

 今年15歳になる雄猫、クロはわがオフィスの一員。彼が招き猫となっているのか時々、私のもとに猫と暮らすための家を設計してほしいという依頼が舞い込みます。
 猫は単独行動を好むハンター。犬のように飼い主に精神的な依存をすることもありません。また、獲物を狙って長時間待ち伏せすることも平気です。依存せず、待つことも苦痛に思わない猫は、仕事などで忙しい人にとってまたとない暮らしの伴侶となるでしょう。
 生来、ハンター気質をもつ猫は狭い所や高い場が大好き。それゆえ、自らの身を隠しながら、家族や家の中を見渡すことができる基地のような場所を設けてあげるととても喜びます。また、吹き抜けに猫だけが足を踏み入れられるキャットウォーク、物見窓などを取り入れることも。外が好きな猫のために、リビングとテラスを自由に出入りできるようにした事例も。また、猫は垂直移動が得意。このため、出入り自由のテラスを囲う外構は余裕をもった高さに設定する、キャットウォークから飛び降りないようにペンダント式の照明器具は避けるなどの配慮も、一方では必要です。
 そうしたちょっとした気遣いのようなものが、猫にはたまらなくうれしい、らしいのです。もちろん、猫の種類や性格、年齢などによって、喜ぶツボはそれぞれ。お施主さんとの綿密な打ち合わせから、猫の個性を見極め、心地よい距離感を計る。これこそが、猫が暮らしやすく、愉しい家をつくる秘策です。

  

※写真キャプション※
左:小樽市の高台に建つ「HIRAYA」には、ロフトへつながる猫棚と呼ばれる専用のステップが。荷物の上げ下げには人間もこれを借用
中:浴室の隣にはトイレを設置。猫がいつでも出入り可能で、かつ人間も気にならないよう、最小限の抜け道を準備(NEKOYA)
右:猫と暮らすコートハウス「CATS HOUSE」。リビング・ダイニングの上部を横切る梁は、ロフトから猫だけが出入りできるような仕掛けが
(事例はすべてTAO建築設計)

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犬と暮らす、猫と暮らす

2011年01月28日 / by : replanmin / category : 特集 - インタビュー

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