岩手の家づくり
自然素材で高性能を究めた省エネ住宅
■盛岡市/Sさん宅/夫婦、子ども2人、母
■設計・施工/(有)杢創舎
HP:http://www.mokusousya.com/
TEL:019-662-2263
今回の事例は、リプラン東北 Vol.26に掲載しております。
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職人の技がさりげなく光る 優しくて穏やかな木の住まい
本州一広い面積を有する岩手県。奥羽山脈と北上山地の2つの山並みと、北上川が南北を貫き、東端にはリアス式の三陸海岸が広がります。気候的には年平均10℃程度と冷涼ですが、内陸部は夏冬の温度差が大きく、比較的温暖な沿岸部でも厳冬期には積雪も。地勢・気候ともに、非常に変化に富んだ地域です。全国3位という豊富な森林資源を有しナンブアカマツやスギが有名ですが、特筆すべきは広葉樹の種類の多さ。岩手のクリといえばプロも一目置く良材で、薪や木炭の生産も昔から行われ、近年は端材を活用したペレットなど木質バイオマスエネルギーの技術開発も盛んです。
盛岡市のS邸は、県産のスギやナンブアカマツなどをふんだんに使った住まいです。驚くのはこれほど自然素材を使用しながら、Q値0.8W/㎡K以下の超高性能住宅であるということ。伝統工法をベースに、今までにない発想を織り込み、伝統と高性能を両立させています。
伝統工法から発想した「二重壁」
このS邸で試みられたのは、二重壁工法です。本構造の外側に、伝統工法「横貫」で固めた躯体が立ち上がっています。いわば、ひと回り大きな構造体で、住まいを丸ごと包み込んだようなもの。そして、内壁と外壁の間の300ミリの空間と、屋根裏の600ミリの空間には断熱材を充填。数値的には、ドイツなどが進めるパッシブハウス(年間暖房消費15kW/㎡)を目標に、予算内でできる最大限のことを行ったそうです。1階は事務所、2階にリビングを配した住まいは、床や柱のスギ、階段や天井のアカマツなど無垢材の柔らかな雰囲気が印象的。渡り顎や金輪継ぎなど高度な仕口で施された木組みの数々は、木を熟知した職人の技の結晶です。また伝統の足固め工法で生まれた床下空間は、メンテナンスに便利なのはもちろん、室内用エアコンを配置し暖房空間として使用。ランニングコストの軽減と節電につながる工夫も随所に見られます。
高額な設備や機器などで性能を引き出す現代住宅に対し、岩手の木材を使い日本古来の伝統工法にこだわる、杢創舎。試行と工夫を重ねた末にたどり着いたのは、人と環境にやさしく長く住み継いでいくことのできる、これからの省エネ住宅のモデルといえるかもしれません。
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Data
《所在地》 盛岡市 《家族構成》 夫婦、子ども2人、母
《設計・施工》 (有)杢創舎 《延床面積》 178.66㎡(約54坪)《構造》 木造(在来工法)・2階建て
《主な外部仕上げ》 屋根・外壁/ガルバリウム鋼板、建具/玄関ドア:K2仕様アルミドア、窓:樹脂サッシ(Low-E・トリプルガラス・アルゴンガス入)
《主な内部仕上げ》 床/スギ・アカマツ無垢床、壁/チャフウォール・和紙、天井/スギ無垢板・和紙
《断熱仕様》 基礎/EPS(特号)120㎜、壁/セルローズファイバー250㎜+ロックウール50㎜、天井・屋根/セルローズファイバー600㎜
《暖房方式》 薪ストーブ・床下エアコン1台(10畳用)
《施工期間》 平成21年4月〜8月(約4.5ヵ月)
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断熱効果の素晴らしさに驚き ーー Sさん談
もともとの自宅は別の場所にあったのですが、断熱材の全く入っていない家でした。その寒さを経験しているので、住宅の強度や性能はもちろん、断熱の厚さについても関心がありました。ですから杢創舎さんから二重壁の提案を受けて、ここなら安心できるとお願いしたんです。私たちから出した希望は、事務所を併用した住まいであることぐらい。すっかりお任せでしたが、収納面にも動線にも大満足しています。断熱効果はやっぱりすごい。リビングの窓脇に温度計を置いていますが、先日10℃以下に冷え込んだ朝も21℃でしたし、その他の日も外気温に変動することなく21〜22℃を保っていて、清々しく毎朝を迎えています。寝室は人の体温のせいかプラス2℃くらい高いですね。
また夏を過ごしてみて気づいたのは、夜間換気の大切さです。8月末に一度、2階の窓を閉め忘れて寝た翌朝がとても涼しかったんです。この家の温度管理のしやすさから想像すると、夜の冷たい空気を取り入れて朝は早々に窓を閉め切れば、日中も涼しいような感じです。来年の暑い夏が今から楽しみですし、もちろんこの冬への不安は全然ありません。
今回の事例は、リプラン東北 Vol.26に掲載しております。
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■盛岡市/Sさん宅/夫婦、子ども2人、母
■設計・施工/(有)杢創舎
HP:http://www.mokusousya.com/
TEL:019-662-2263