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*新築事例:一押し住宅

イチ押し住宅
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外からの視線は、木の格子塀により、適度に遮りつつも完全には閉じていない。
 

リビング空間
まるごと自由空間
外への「視線」外からの「視線」を
デザインする

■伊達市・Kさん宅
■設  計/伊藤建築創作工房 伊藤俊郎
      電話:0143-59-1610
■施  工/須藤建設(株)
      電話:0142-22-0211




ここでこうして絵を描いて、離れて見たり、違う場所に絵を移動して眺めたりと、自由自在に空間を使っている。



外観。三角屋根の部分にリビング空間が内包されている。

キャットウォークから見下ろして。
生活の中心の場で
生活の一部である趣味を堪能する
 絵を描くことが趣味というKさんの住まいには、自ら描いた作品や有名美術館の展覧会ポスターなどお気に入りのものがたくさん飾られています。そんなKさんですから、家の中で存分に趣味を楽しめるアトリエ空間がほしかったのは言うまでもありません。その想いは、建築家の伊藤俊郎さんに出会うことで実現されました。
 「壁はたくさんいらない、トイレのドアもいらない」とさえ言うKさんの希望通り、アトリエも兼ねた、ワンルームの開放的なリビング空間ができあがりました。また南面の大開口部は、外のデッキへとリビング空間が連続するような効果を生み、さらに開放感をプラスしています。これだけの十分なスペースが確保できているので、Kさんは自分の絵を近くで見たり遠くに離れて眺めてはもう少し手を入れたりと、空間を自由自在に使いつくしているそうです。この豊かなリビング空間で好きなものに囲まれた暮らしぶりは、住まい手に元気を与えているようです。

Kさんは木の感じと北欧系の住宅が好きとのこと。大きな空間のあちらこちらに好きなものが自由に飾られている。階段の横がアトリエ空間。

開口を開け放てば室内とデッキが一体となり、特に夏、大きな「くつろぎ」を与えてくれる。

壁に掛けられた額や窓辺の鉢植えも、視線を楽しませる。
外への「視線」外からの「視線」をデザインする
文/伊藤 俊郎

 「北海道の家はあたたかいのが一番」とか「住宅は大胆に造っておおらかに暮らす」とか、けっこうノー天気なことを考えている私ですが、いくつかの事柄にはかなり慎重です。そのひとつが「視線」ということ。家の内に居る人の視線、通りを行く人の視線、「見る、見られる」という関係。
 多くの敷地状況は十分な広さもなく、それをとり囲む環境もけっして良好とはいいがたい時代です。
 私の場合、この視線というテーマが配置計画や平面計画を決定する時の大きな要素になっています(とうぜん室内にも連動します)。
 開口部を通して内よりどこが見たいか、見たくないか。通りを行く人にどこまで見せて、どこからクローズしたいかなどを慎重に見極めることがとても大切だと思っています。表現を変えると敷地状況が家を(形や色も含めて)造るということかもしれません。
 まず、内より外に向かってどこを見て生活したら気持ちが良いかを考えます。次に壁面のどの位置にどのぐらいの大きさで、どんな形式の開口部が良いかを考えます。室内を歩いている時、ソファーに座った時、テーブルを使用した時、床に座りこんだ時などをイメージしながら、開口部の床からの高さ、天井からの高さなど調整します。
 台所で調理をしていてふっと顔をあげた時、その視界に花や木、山や海が見えるというようなことを、とても大切にしたいと思っています。ゆったりソファーでくつろいでいる時など、背中に他人の視線を感じるのはとても気持ちの悪いことだと思っています。ソファーの後ろにはしっかりとした壁を造るようにしています。
 浴室やトイレはもっと大胆に気持ち良く、大きな開口部を造りたいと思うのですが、それを許すロケーションにはめぐり会ったことがありません。せめてもの手法として壁を閉じ、トップライトに陽を運んでもらい、通風をしてもらってます。
 こんな日常のひとこま、ひとこまを積み重ねてひとつの形にしていきます。

建材は「安価なホンモノ」を選ぶ

 住宅に使用する建材は、高価なニセモノより安価なホンモノを選びます。安価なムクの床材などは、時にすいたり、ねじれたりします。
 それを見た時にどんな想像をするかというあたりが、自分の家を造る時の価値観かもしれません。木がねじれているのを見て、木も生きていると感じる人。隙間を見て、イヤラシイと感じる人。どちらが良いかではなく、前者はハウスシックなど無縁な家を手に入れるだろうし、後者は莫大な資金を用意するか、ハウスシックなどものともせず、石油漬けの家を手に入れることになります。

北海道の「くつろぎ」に「あたたかさ」は欠かせない

 北海道の家を造る時にはどうしても「あたたかさ」を抜きに話すことはできません。健康で経済的で、手に入れた家を隅々まで使い切り、広々とした空間を楽しむためには、断熱性能や気密性能を無視しては成立しません。さわやかな温熱環境や室内空気環境もデザインの一部だからです。

その日、その時間で、気に入った場所に腰掛けて過ごす。ワンルームの中にはいくつもの「くつろぎ」の場がある。



2階キャットウォークから和室を見る。光を抑えた和空間がまた落ち着く。

床・天井はパイン縁甲板。木はKさんの好きな素材でもある。

天窓からの光も心地よい浴室。ここにも「くつろぎ」が満ちる。




建築データ
構造規模/木造・2階建て、延床面積/145m2(約44坪)、 <外部仕上げ>屋根/ガルバリウム鋼板蟻掛、外壁/木製サイディング+ガルバリウム鋼板、建具/玄関ドア:木製断熱ドア、窓:木製サッシ、トリプルガラス、
<特徴的な内部仕上げ>床/パイン縁甲板、壁/塗壁、天井/パイン縁甲板、
<断熱仕様>基礎/SF板(B3)100mm、床下/土間コンクリート下:SF板(B3)50mm、壁/細繊維グラスウール100mm+グラスウール64kg25mm、屋根/細繊維グラスウール200mm+SF板(B2)38mm 
工事期間/平成9年11月〜平成10年4月(約6ヵ月)

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