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リビング空間 まるごと自由空間 外への「視線」外からの「視線」を デザインする
■伊達市・Kさん宅 |
ここでこうして絵を描いて、離れて見たり、違う場所に絵を移動して眺めたりと、自由自在に空間を使っている。 |
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Kさんは木の感じと北欧系の住宅が好きとのこと。大きな空間のあちらこちらに好きなものが自由に飾られている。階段の横がアトリエ空間。 |
開口を開け放てば室内とデッキが一体となり、特に夏、大きな「くつろぎ」を与えてくれる。 |
壁に掛けられた額や窓辺の鉢植えも、視線を楽しませる。 |
外への「視線」外からの「視線」をデザインする |
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文/伊藤 俊郎 |
「北海道の家はあたたかいのが一番」とか「住宅は大胆に造っておおらかに暮らす」とか、けっこうノー天気なことを考えている私ですが、いくつかの事柄にはかなり慎重です。そのひとつが「視線」ということ。家の内に居る人の視線、通りを行く人の視線、「見る、見られる」という関係。 多くの敷地状況は十分な広さもなく、それをとり囲む環境もけっして良好とはいいがたい時代です。 私の場合、この視線というテーマが配置計画や平面計画を決定する時の大きな要素になっています(とうぜん室内にも連動します)。 開口部を通して内よりどこが見たいか、見たくないか。通りを行く人にどこまで見せて、どこからクローズしたいかなどを慎重に見極めることがとても大切だと思っています。表現を変えると敷地状況が家を(形や色も含めて)造るということかもしれません。 まず、内より外に向かってどこを見て生活したら気持ちが良いかを考えます。次に壁面のどの位置にどのぐらいの大きさで、どんな形式の開口部が良いかを考えます。室内を歩いている時、ソファーに座った時、テーブルを使用した時、床に座りこんだ時などをイメージしながら、開口部の床からの高さ、天井からの高さなど調整します。 台所で調理をしていてふっと顔をあげた時、その視界に花や木、山や海が見えるというようなことを、とても大切にしたいと思っています。ゆったりソファーでくつろいでいる時など、背中に他人の視線を感じるのはとても気持ちの悪いことだと思っています。ソファーの後ろにはしっかりとした壁を造るようにしています。 浴室やトイレはもっと大胆に気持ち良く、大きな開口部を造りたいと思うのですが、それを許すロケーションにはめぐり会ったことがありません。せめてもの手法として壁を閉じ、トップライトに陽を運んでもらい、通風をしてもらってます。 こんな日常のひとこま、ひとこまを積み重ねてひとつの形にしていきます。 建材は「安価なホンモノ」を選ぶ 住宅に使用する建材は、高価なニセモノより安価なホンモノを選びます。安価なムクの床材などは、時にすいたり、ねじれたりします。 それを見た時にどんな想像をするかというあたりが、自分の家を造る時の価値観かもしれません。木がねじれているのを見て、木も生きていると感じる人。隙間を見て、イヤラシイと感じる人。どちらが良いかではなく、前者はハウスシックなど無縁な家を手に入れるだろうし、後者は莫大な資金を用意するか、ハウスシックなどものともせず、石油漬けの家を手に入れることになります。 北海道の「くつろぎ」に「あたたかさ」は欠かせない 北海道の家を造る時にはどうしても「あたたかさ」を抜きに話すことはできません。健康で経済的で、手に入れた家を隅々まで使い切り、広々とした空間を楽しむためには、断熱性能や気密性能を無視しては成立しません。さわやかな温熱環境や室内空気環境もデザインの一部だからです。 |
その日、その時間で、気に入った場所に腰掛けて過ごす。ワンルームの中にはいくつもの「くつろぎ」の場がある。 |
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前回でご紹介の家はこちらです |